”f分の1ゆらぎ”でありたい
16歳でモデルデビューされ、ジュエリーや化粧品などの企業広告やウェブCMなどでモデルとしてご活躍される相羽薫さん。実は藤原歌劇団※1に所属するオペラ歌手でもあります。美しさと歌唱力という二つの魅力を持ち合わせている相羽さんにご自身のルーツや目指す未来像を伺いました。
モデル・声楽家として
モデルの仕事としては、ハイブランドのファッショショー、TVCF、雑誌、企業広告などを中心に活動しています。モデル、というと雑誌モデルのイメージが強いかと思いますが、実は企業広告のお仕事も結構あるんです。音楽活動については音大の声楽科を卒業後、地元の名古屋で活動を始めました。
現在ではメゾソプラノ歌手としてオペラ出演やコンサート、イベントやライブハウスでの演奏を行っています。ライブは一緒に活動しているピアニストの津嘉山梢さんがジャズピアニストなのでジャズのお店で行うことが多いんですが、バロック、古典、ロマン派初期のオペラなどクラシックの演目を歌う機会をいただいています。
クラシックを好まれて聴きにいらっしゃる方は年齢層が高めなのですが、30代や40代の今までクラシックに馴染みのない方々にもあまり敷居の高くない環境でアリアや歌曲を楽しんでいただければいいなと。
「あなたはモデル以外で何かできますか?」と聞かれ・・・
もともとコーラスをやっていたんですが、音楽で生きていこうとは思っていませんでした。16歳のときからモデルをしていたので、18歳で進路を迷っていた時、両親に内緒で名古屋の自宅から新幹線に乗ってモデル事務所の面接に行ったんです。その面接のとき「あなたはモデル以外で何かできますか?」と聞かれ、「何があるかな・・・あ!歌!!」と思い至って。声楽を頑張ってみようかな、と。兄も「音大を受験すれば?」と後押ししてくれました。彼自身アマチュアのチェリストで、両親も音楽が好きで、母がキッチンで歌わない日はないくらい、だったので子どものころから音楽が生活の一部になっていましたが、ソリストの経験はなく・・・初めて一人で歌ったのが音大の受験という・・・その時はモデル業の中の特技のひとつになればいいな、という感覚でした。
大学の卒業公演でカルメンを演じることになり、そのとき一つのことをみんなで作り上げる楽しさに病みつきになってしまったんです。やっぱり舞台なので一つの役を争ったり、苦労も多かったんですが、色々大変なことを乗り越えてやり遂げたあの達成感はたまりませんでしたね。もちろん歌は大好きですが、この達成感をまた味わいたい!という想いがプロとして生きていくモチベーションのひとつになりました。
大学卒業後は地元の名古屋を中心に活動していたんですが、東京に出ることになったとき、ヘアメイクさんを発起人として、周りのプロのご協力のもとプロモーションビデオとしてカルメンのハバネラ※2を撮影しました。メイクはもちろん、音響や撮影、照明やスタジオなど、みなさんが私を応援してくださる気持ちで作り上げていただいた、関わった皆様のアイディアとこだわりが詰まった作品になっています。自分でよく思うんですが、実力以上のいい出会いやご縁に恵まれているな、と。
ソリストとしてオペラの舞台に・・・そして”f分の1ゆらぎ”
言うのがはばかられるんですが・・・いつかソリストとしてオペラの舞台に出たいですね。名のあるオペラ団の本公演で活躍するのは夢です。ビジュアル的な美しさだけでなく、宗教音楽からロマン派のオペラ、シャンソン、ジャズまでオールマイティになんでも歌いこなせる幅広いレパートリーや、舞台上の軽やかな所作を持ち合わせた歌手に憧れています。
アンネ・ゾフィー・オン・オッターやマグダレーナ・コジェナ、ケイト・リンジー、エリーナ・ガランチャなどのメゾソプラノ歌手が大好きです。”f分の1ゆらぎ”っていうリラックスのメカニズムがありますが、彼女たちの声は私にとって “f分の1ゆらぎ”。私もそうありたい、って言う想いを込めて、最近ではライブのタイトルに”f分の1ゆらぎ”を付けたりしています。みなさんがリラックスできる歌声、存在でありたい・・・自分で自分の録音を聴きながら寝ちゃったりもするんですが(笑)
モデル兼声楽家、というのは食事制限や体形の管理など苦労もあるんですが、その両面があって私というパーソナリティがあると思っています。どちらも自分であり、そこをみなさんに愛していただける存在になりたいですね。モデルとしてはWEBや広告など媒体を通して見ていただけますが、ライブでは直接みなさんに見て・聴いていただき、こちらからもみなさんのお顔を見て歌うというところを大切にしています。ライブに足を運んでいただいて私という存在を知っていただけるととても嬉しいですね。
お話を伺って・・・
スレンダーで透明感のある相羽薫さん、モデルとお聞きして納得の美しさですが、内面に秘めた情熱は熱く、公演活動やプロモーションビデオで歌われている演目そのままに、まさに”カルメン”でした。
控えめに「愛される存在になりたい」とおっしゃられる謙虚さの一方、ご両親に内緒で東京に出てきて面接を受けられるという情熱的な行動力!(ちなみに、帰りの新幹線が台風で足止めとなり、ご両親に事態が発覚したそうで…その後ご両親からは「そんなにやりたいたなら止めません」という応援を勝ち取ったそうです!!)実力以上のご縁に恵まれています、とおっしゃられる相羽さんですが、ご自身の魅力がいい出会いを引き寄せていると感じます。
特技は9年間続けられているフラメンコ、という相羽さんは立ち居振る舞いもお綺麗です。秘めやかに情熱的な現代のカルメン・相羽薫さんを、ぜひライブでご覧ください。
藤原歌劇団※1 1934年に創立した日本で最も古い歴史を持つオペラカンパニー
ハバネラ※2 ビゼー作曲オペラ『カルメン』よりアリア
Kaoru Aiba / Mezzo Soprano 【相羽薫オフィシャルウェブサイト】
http://kaoruaiba.com/
“Habanera”Carmen MV(HD)