スタッフの皆さんの待遇や地位向上が絶対必要。
そのために運送業界全体を良くしようと
もがきながらも地道に前に進んでいます。

コワモテだけど、優しい兄さんたちが日本の物流を支えてくれている

業種としては“一般貨物自動車運送事業”。いわゆる運送業です。主にコンビニエンスストアや書店で売られる書籍・雑誌を、関東から大阪・京都などの関西方面に大型トラックで長距離輸送しています。早い便ですと0時過ぎ現地到着ですので、生鮮物輸送以上にタイトでハードなスケジュールです(苦笑)
もともとは父と伯父が始めた事業で昭和41年に法人化しました。もう半世紀を過ぎました。伯父と祖母が住む家に事務所があったので、子供の頃から会社に出入りしていました。運送業って一昔前は背中に綺麗な絵を描いている人が普通にいる業界で、従業員がみんなコワモテで荒っぽいイメージで見られていました。でも自分にとっては赤ん坊の頃から面倒見てくれた方達で、事務所にいるときはしょっちゅう遊んでもらいました。チンチロリンや回り将棋で(笑)今もそうですが皆、優しい人達です。
当時から働いて下さった従業員の方々がここ何年かで定年退職されています。世が世なら背広着て左うちわでゆっくりしていても良い方達ですのに、何十年もハンドル握って本当にきつい仕事を最後の最後までしてくれました。

トラック輸送はインフラ、もっと自分の仕事を誇りに思おう

運送業界は規制緩和により参入が自由化になった結果、それまで免許制だった業界に、明らかに福利厚生等の加入は不可能であろうコスト度外視の低運賃を標榜する新規参入業者が増え、運賃の低下を招き、もはや、経営がままならない業界となっています。当社が輸送させて頂いている書籍や雑誌も、インターネットの普及や、個人書店から大型書店・コンビニエンスストアへの移行や、インターネット販売サイトの台頭などで物流が変わってきています。多くの方が何も気にせず、ワンクリックすれば商品が届くと思っていますよね?先日、ヤマト運輸さんが運賃値上げやサービス内容変更に踏み切りましたが、ワンクリックの裏にはたくさんの人の手が介在しています。運送業のドライバーは、業界の地位が低いため、社会一般的に風当りが本当にきついです。パン屋さんのトラックが雪で閉じ込められている中、自分の判断で回りの方にパンを配って話題になりましたが、同じ雪の中、一晩寝ずに一生懸命雪をかきわけて、本の配送のために納品先に行ったら「今、本なんか持ってくるなよっ!」と怒られた方もおります。確かにあの状況では食料を届けるのが最善でしょうが、これが私共の仕事なのでどんな状況でも配達するのが出版物流に携わる我々の使命です。

会社を父から継いだ現在でも、自分の子どもに運送の仕事を継がせて良いのか悩んでいます。
ですが、ある講義で、物流を研究している先生が「トラック輸送はインフラだよ。水道ひねれば水は出るけど、その水を消毒する塩素は誰が運んでいるの?ガスもそうだよ。あなたたちがいなかったら我々は水も飲めないんだよ。あなたたちの仕事はもっと誇りをもっていいんだよ」と仰って下さいました。そのとき「あ、救われた」と思いました。そうだ、私達はもっと自分の仕事に誇りをもって良いんだ、社会にとって必要な仕事なんだって。
乗務員は本当に使命感をもって仕事をしてくれています。その彼等がアゴで使われるのが、本当に悔しいです。運送業界自体、古い体質の多重構造で、その上、事業規模も力も小さい会社が多いので、連携して何かをするのはなかなか難しいのですが、運賃の値上げはもちろん、運送業界全体の地位を上げていこうとずっと取り組んでいます。先輩や仲間と手を取り合い、議員の先生方や行政、学者の先生方のお力添えを頂きながら、その輪は全国に広がっています。色々乗り越えなくてはいけない問題もまだまだ多いのですが・・・地道ですけど、もがきながら前に進んでいる状態です。

レベルが高い自慢の乗務員たち、彼らのためにも業界を改善するという使命

当社の特色は、乗務員みんなのレベルが高いことです。プロ意識があって責任感が強いです。みんなが稲垣運輸の看板を背負って仕事をしてくれています。乗務員の働きぶりを見て荷主さんが直接仕事を依頼して下さることもあります。会社としては現場第一主義を方針としています。皆さんプロなので、言わなくても自分たちで頑張ってくれます。乗務員同士のネットワークも広いですし、会社の垣根を超えたネットワークも各自広く持っています。ハンドル握って会社を出たら乗務員を信用するしかないですし、会社がみんなを信用しているからみんながついてきてくれる。もちろん自分も生活がありますから給料は必要ですが、自分のことよりも乗務員に報いたいです。

ここまで会社を大きくした父の存在は大きいです。同じ業界の諸先輩方も、いろいろなことを教えてくれ、また、いろいろなことに誘ってくれるので、本当に感謝しています。トラブルはつきものの業種なので何事もなく普通に日々の業務が進んでいくことが最上ですが、この状態をもっと良くして、実際に現場で苦労しながら働いてくれるスタッフとその家族がより幸せになるように、業界全体を改善していくというのが目標です。

 

お話を伺って・・・

軽妙な語り口で冗談を交えながらも、スタッフの皆さんや業界への想いを語ってくださった稲垣社長。何事も気負わず「楽天家なんです」と笑顔を見せるお姿は、トラック輸送を笑顔のあふれる業態に変革されるリーダーであることを予感させます。稲垣社長、乗務員の皆さん、これからも私たちの生活をよろしくお願いします!

稲垣運輸株式会社
東京都練馬区南大泉3丁目28番14号
コーポレートサイト http://inagakiunyu.co.jp/